不動産の買付証明書の入れ方
「買付証明書」とは不動産を購入契約する前の段階で、物件の購入希望者が売主に対して「物件を○○円で購入したいです」という意思表示を行う書類です。
物件を内覧し、買う候補になるかもというステージから一段階上の「購入の意思」を不動産会社や売主に伝えるものですが、これを提出したならば、絶対に購入しなければならないファイナルアンサーになってしまうのか、それともキャンセルできるものなのか、もしキャンセルした場合、何らかのペナルティが発生してしまうのか、いろいろ気になるものです。
このコラムでは、この気になるところについてはもちろん、買付証明書の取り扱いについて、細かく解説していきます。
【目次】
①買付証明書とは?
②買付証明書と売買契約の違い
③買付証明書を出すときの注意点
(1)極端な指値はNG
(2)買い付けをキャンセルする場合は
(3)自己資金の準備
④まとめ
①買付証明書とは?
買付証明書とは、物件購入の申し込みのことです。売買を仲介する不動産会社に「買付証明書」を提出することで、売主に対して「この物件を買いたい」という意思表示をします。
買付証明書は、仲介業者を通じて、売主に提出されていきます。
買付証明書には特に決まった書式はないため自分自身で作成することもできますが、担当の不動産会社が用意してくれる書式を使用すれば差し支えありません。
買付証明書の記載内容は、購入を希望する不動産の表示(坪数、住所などの情報)、購入希望金額、手付金の額、支払い方法(住宅ローン利用の有無など)、希望する契約締結時期と物件の引き渡し時期などです。購入希望金額に売主側から提示されている希望販売価格よりも低い価格を提示(指値)して価格交渉に持ち込むこともできます。
また、買い付けの競争率が高いことが予想される物件などの場合、希望売却価格より高い価格を提示して、他の購入希望者より有利な条件を付ける(買い上がり)ことも可能です。
売主側は、受け取った買付証明書の内容に問題がなければ、仲介業者に対して「売渡承諾書」を提出します。
売渡承諾書は、この仲介業者経由で、買主に提供されます。
この時点で、購入希望者は買主の第一候補となり、売主との間で正式な売買契約を結ぶための準備や手続きが開始されます。
なお、買付証明書を入れているのが一人だけとは限りません。
物件に複数人からの買付証明書が入った場合、売主はその複数人の中から最終的に買主となる人を選ぶことになります。
買主をどのように選ぶかは売主次第ですが、買付証明書を入れたのが一番早かった人、決済希望日が一番早い人、最も高い購入希望金額を提示した人、現金で支払う旨を記載している人などが有利になる可能性が高いでしょう。
②買付証明書と売買契約の違い
買付証明書は、あくまで購入希望者側からの一方的な意思表示という位置づけのものあり、法的な拘束力は一切ありません。従って、買付証明書を提出したからといって物件を必ず買うことができるとは限りませんし、必ず買わなくてはならないという義務もありません。また、買付証明書を出した後にキャンセルしたとしても、売買契約締結前であれば購入希望者側に違約金などのペナルティは一切発生しません。その代わり、売主側も買付証明書を提出した人に必ず物件を売らなくてはならないわけではないので、注意が必要です。こうした側面からも買付証明書が売買契約の締結を確約するものではなく、あくまで買主と売主が売買契約に向けて交渉に入る前段階の手続きであることがわかります。
一方、売買契約は正式に締結された瞬間から法的拘束力が発生します。買主側あるいは売主側から一方的に契約を破棄することはできず、売買契約成立後に何らかの問題が発生してやむを得ず契約を解除することになった場合は、買主・売主双方の条件を調整して、お互いの合意の上で解約に至る必要があります。条件が折り合わず合意に至ることができない場合は、損害賠償請求や訴訟に発展してしまうこともあります。
③買付証明書を出すときの注意点
購入前に指値を入れて価格交渉の余地を残せるのが買付証明書の特徴です。
しかし、根拠もなくあまりにも安い価格で指値を入れてしまうと、価格交渉を拒否されることもありますし、交渉に応じてもらえたとしても希望額を通すのはかなり難しいでしょう。
指値を入れる場合は、購入後の補修費用を差し引く、金融機関が算出した物件の積算評価や収益評価を根拠にするなどして、値引き理由について売主が納得できるように配慮すると交渉がうまくいく可能性が高まります。
また、仲介業者からもアドバイスを受けておくと安心です。
前段でも触れたとおり、買付証明書には法的な拘束力は一切ありません。
そのため、仲介業者やオーナーに買付証明書を提出した後でも、買付証明書は一切のペナルティを受けずに取りやめることが可能です。
しかし、特段の理由もなく軽い気持ちで何度もキャンセルを繰り返していると、いずれ売主と仲介業者の信用を失うことになり、以後物件の紹介を断られてしまう可能性があります。
不動産の売買は大きな金額が動く取引ですので、ノーリスクで出せる買付証明書といえども、できる限り熟慮した上で行い、やむを得ずキャンセルする場合には必ずその理由を説明して、売主や仲介業者に納得してもらうようにしましょう。
購入に充てる自己資金の準備についてもよく考えておきましょう。
定期預金の満期解約などが絡む場合はそのスケジュールを押さえておく必要がありますし、親族などから資金援助を受ける場合は、どれくらいの金額をいつまでに準備してもらえるのかを確認しておく必要があります。
準備できる自己資金の金額とスケジュールを把握しておかないと、購入代金の支払いが滞り、物件の引き渡し時期に影響する可能性もあります。
④まとめ
買付証明書は買主が不動産を購入したいと表明する意思表示であり、正式な売買契約書と違って法的拘束力はなく、後戻りができる段階でもあります。
提出に当たってあまり神経質になりすぎる必要はないでしょう。
しかしながら、不動産の売買は多額の資金が動く大きな取引でもあります。
紹介した注意点なども参考にして、真摯に対応するようにしましょう。
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